高齢者の転倒はどこで起きる?ランキングTOP5
東京消防庁の救急搬送データ(令和6年中・2026年7月確認)によると、高齢者の事故のうち**「ころぶ」事故は全体の8割以上を占めます。そして「ころぶ」事故がもっとも多く起きているのは、外出先ではなく住宅などの居住場所(42,180人)。さらにそのうち9割以上(39,053人)が屋内**で起きています。
つまり、高齢者の転倒の主戦場は「住み慣れた家の中」です。屋内で転倒が多い場所は、次のとおりです。
| 順位 | 場所 | 搬送人員(令和6年中) |
|---|---|---|
| 1位 | 居室・寝室など | 29,783人 |
| 2位 | 玄関・勝手口など | 3,900人 |
| 3位 | 廊下・縁側・通路 | 2,653人 |
| 4位 | トイレ・洗面所 | 1,229人 |
| 5位 | 台所・調理場など | 1,079人 |
(出典:東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」令和6年中)
注目してほしいのは、1位の「居室・寝室」が、2位の玄関の7倍以上という点です。「危ないのは階段やお風呂」というイメージとは、かなり違う結果ではないでしょうか。
なぜ「何もない部屋」で転ぶのか
リハビリの現場で転倒のきっかけをうかがうと、驚くほど同じパターンが出てきます。理学療法士の視点で整理すると、居室・寝室で転倒が多いのには理由があります。
①「またぐ・よける」動作が毎日発生する場所だから。 カーペットのふち、電気コード、床に置いた新聞や座布団。若い人なら無意識にまたげる2〜3cmの段差が、すり足ぎみになった足には引っかかります。転んだ方のご自宅にうかがうと、敷居やラグのふちなど「本人も家族も気にしていなかった数センチ」が原因ということがよくあります。
②立ち上がり・起き上がりの動作が集中する場所だから。 ベッドや布団からの起き上がり、椅子やこたつからの立ち上がりは、実は体にとって難しい動作です。立ち上がった直後はふらつきやすく、つかまる物がないと姿勢を立て直せません。
③「慣れ」が油断になるから。 玄関や階段では本人も注意します。しかし毎日過ごす部屋では注意のスイッチが入りません。夜、暗い中でトイレに立つときの寝室からの動線は、その典型です。
逆に言えば、居室・寝室の転倒リスクは、家の側を整えることで下げられる余地が大きいということでもあります。
場所別・今日からできる対策
ランキング上位の場所ごとに、「今日からできること」と「工事で直すこと」を分けて紹介します。いきなり工事を考える必要はありません。まず物の配置と福祉用具で試し、それでも足りない部分を工事で補うのが、費用も効果も無駄のない順番です。
1位:居室・寝室
- 今日からできること:床に物を置かない/電気コードを壁沿いにまとめる/ふちがめくれたラグは撤去する/ベッド脇に足元灯を置く
- 工事で直すこと:敷居などの小さな段差の解消、立ち上がり位置への手すり設置。手すりは「どこに付けるか」で使われるかどうかが決まります。詳しくは 介護の手すりの位置と高さ をご覧ください。
2位:玄関・勝手口
- 今日からできること:上がりかまちに置く式の踏み台や縦手すり型の福祉用具を試す/靴の脱ぎ履きは腰かけて行う
- 工事で直すこと:段差の解消・式台や手すりの設置。ポイントは 玄関の段差解消 にまとめています。
3位:廊下・縁側
- 今日からできること:夜間の動線(寝室→トイレ)に人感センサーライトを置く/床に物を置かない
- 工事で直すこと:手すりの設置、滑りにくい床材への変更
4位:トイレ・洗面所
- 今日からできること:夜間はトイレまでの照明を確保する/立ち座りの動作を一度観察してみる
- 工事で直すこと:便座の立ち座りを支える手すりの設置など。トイレの介護リフォーム で詳しく解説しています。
なお、ランキングは救急搬送の人数で見たものです。浴室・階段は件数こそ上位5位に入りませんが、転んだときに大けがになりやすい場所なので、対策の優先度は高めに考えてください。浴室の介護リフォーム・階段の介護リフォーム も参考になります。
実家の危険チェックリスト(帰省したら10分でできる)
理学療法士が家屋評価でよく見るポイントを、ご家族向けに絞ったチェックリストです。次に実家へ行ったとき、親御さんの生活動線を一緒に歩きながら確認してみてください。
- 床に新聞・雑誌・コード類が置きっぱなしになっていないか
- ラグやカーペットのふちがめくれていないか、滑り止めはあるか
- 部屋の入口などに2〜3cmの小さな段差がないか
- よく座る椅子・こたつ・ベッドから、スムーズに立ち上がれているか
- 寝室からトイレまでの夜の動線に、照明とつかまれる物があるか
- 玄関の上がりかまちで、片足立ちのまま靴を履いていないか
- 廊下や階段に、手すりまたはつかまれる物があるか
- スリッパや靴下で滑りやすい床を歩いていないか
- 浴室の床が滑りやすくないか、またぎが高くないか
- 「最近つまずくことが増えた」と本人が感じていないか
チェックがついた場所が、その家の「直す優先順位」の候補です。すべてを一度に直す必要はありません。転倒のリスクが高い場所から、できる範囲でが基本です。
直すと決めたら:制度とお金の話
工事で直す場合、要支援・要介護の認定を受けている方は、介護保険の住宅改修(上限20万円・自己負担あり・2026年7月時点)が使える場合があります。工事の前の事前申請が必須なので、順番だけは間違えないでください。詳しくは 介護保険の住宅改修費とは にまとめています。
まだ認定を受けていない・親が元気なうちに備えたいという場合は自費工事になりますが、手すりや段差解消は数万円台からできる工事も多くあります。場所別の費用感は 介護リフォームの費用・相場、業者選びで失敗しないコツは 失敗しない介護リフォーム業者の選び方 をご覧ください。
まとめ
- 高齢者の転倒の多くは家の中で起き、1位は意外にも「居室・寝室」(東京消防庁・令和6年中)
- 原因は「何でもない数センチ」と「立ち上がり動作」と「慣れ」。危険はいかにも危ない場所ではなく、毎日の場所にある
- 対策は「物の配置→福祉用具→工事」の順で。まず今日できることから
- 帰省したら10分、チェックリストを持って親の生活動線を一緒に歩いてみる
転んで骨折してから家を直すのと、転ぶ前に直すのとでは、その後の暮らしが大きく変わります。この記事が「転ぶ前に直す」一歩になればうれしいです。
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※この記事は一般的な情報をまとめたものです。お一人おひとりの体の状態や介護・医療的な判断は、主治医・ケアマネジャー・地域包括支援センター等にご相談ください。介護保険・補助金などの制度や金額は変わることがあるため、最新はお住まいの市区町村でご確認ください。
